「俺は南ハルカに汗をふいてもらうんだ」
「南ハルカの言葉は絶対に正しいのだ」

「って保坂もおもしろい奴になったよね」
「速水先輩…笑い事ではないと」
「マキ、人が人を愛する事は必然な事なのよ、温かく見守らなきゃ」
「絶対楽しんでますよね?」

普段通りの先輩と後輩の会話、話題は保坂の事だ。
「ハルカがもし気持ち悪い魔の手にかかったらと思うと私は」
「安心しなよ、見栄っぱりで小心者の保坂には無理だろうから」
「でも…」
「大体アイツ女の子と付き合った事があるのかも怪しいわよ、…そうだ調べてみよう!」


「…速水先輩、何を調べるんですか?」
「保坂の女性経験よ、いきなり抱きついたりしたら解るかも」


その発言にマキは驚く
「ちょっ速水先輩!いきなり抱きついたりしたら襲われますよ!」
「大丈夫、保坂なんかヘタレだからそんな勇気ないわよ」
「大体女性経験を調べるのに何故抱きつくんですか?」
「対応で何となく解るでしょ?」
「それはどうかと…。」
今一つ納得できないマキであるが想像をふくらませ速水は楽しそうに保坂を捜し教室に戻って行く
「速水先輩!…もぅ!」
しょうがなく速水の後をマキはついて行った。


「やはり南ハルカの為に栄養を重視した料理を」
教室では窓際で朱く染まった空を眺め何かを考える保坂が一人呟いていた

「うわっ、独り言キモい!」
「あの空が保坂にあってるわ」
個々の意見を発しながら廊下で保坂を観察する
「速水先輩、止めといた方が…」
「マキ、見てなさい」
「いや話しを…」
マキの意見を聞かず速水は教室に入って行く
そして後ろから気配を感じ保坂は速水の方に顔を向けた
「保坂…」
「速水か、どうした?」
「私…、私…」
「なんだ?体調が悪…」
その言葉を継ぐかのようにいきなり抱きついた

「…速水、何のマネだ?」
抱きつかれた保坂は驚きもなく速水を見つめる

素で対応する保坂は想定外であり速水はパニックに陥る
「…好きなの!」
驚いた速水は考えも無しにその言葉を呟いた。

廊下でその状況を見つめるマキは驚きを隠せずに慌てだす
「あら、マキどうしたの?」
「???、!!!」
マキは声に振り向きまた驚いた。そして速水もその声に気付いた
「速水…、お前も知ってる通り俺は好きな人がいる」
「そうね、悪ふざけもここまでね。保坂、廊下を見なさい!男を試す時よ!」
そう言ってマキの方を指をさした

何事かと指した方に足を向け見てみるとマキと共にハルカがこちらを見ている


「男として羽ばたきなさい」
小声で保坂に呟く
(速水…、俺の為に、手本を見せる為に)
何かに納得したように二人に近づいた
マキとハルカは近づく保坂を見つめた
そして保坂は二人の前に立ち、息を吸い顔を上に向け叫んだ
「好きだ!好きです!付き合ってくれ!」
その言葉が重い静寂を作る
マキはハルカに視線を向け、保坂もハルカを見つめ答えを待つ
ハルカは顔を真っ赤にしてマキを見つめる
「魅せたじゃない保坂」
速水は満足顔でうなずいた


重い空気の中、ハルカは口を開く。保坂は聞き逃さないよう唇を見つめ耳を澄ます


「…えっと、マキごめんね私邪魔だね」
「っはい?」
「この人前もマキに告白してたじゃない、早く答えてあげなよ。私は帰るから、バイバイ!」
そう言って足速に去って行った
取り残された三人は
「速水先輩…」
「面白かったねマキ。速水…諦めたらそこで終わりよ!はい上がりなさい!魅せる男になりなさい」
「ああ、よく解らない状況だが振られた訳ではないからな!」
マキだけが場違いかのように困り顔で二人は満面の笑みで語り合った


「保坂…」
「速水…」
二人の唇がそっと触れ、少しの空白の後愛おしく離れる
「保坂、ハルカちゃんはいいの?」
「…相変わらず速水は意地悪だな。今の俺にはお前しか見えない」
「それキモいよ」
「これ以外の言葉では表せないんだからしょうがないだろ」
「でも案外嬉しいかも…あぅ!」
速水が言葉を続けると保坂の手は腹部からスカートの中へこそばゆくそっと動いて行く
「いきなり?普通胸を先に攻めるんじゃない?」
「悪い…よく解らないんだ」
「ふふっ」
そう言って速水はまた保坂の唇を求める

 

 

inserted by FC2 system