ここはとある家のとある部屋。そこに座る子供が一人。
「外は寒いからなぁ…カーペットがあったかいよ…」
金髪にとんがり頭。みんなお馴染みのマコト君、通称マコちゃんである。
「おーい、ココア持って来たぞぉ〜〜」
足でドアを器用に開け、威勢のいい少女がココアが二つ乗ったトレーをテーブルに置く。
名前はトウマといって名前も見かけも少年だが、胸元には微かに成長の印。将来が楽しみな子である。
「砂糖は?」
「2杯で頼んだ!」
「俺は‥俺も2杯でいいや」
トウマの手により、粉雪のような白砂糖がココアに吸い込まれていく。
「ほらよ」
「おっ‥サンキュー♪」
トウマは甘くなったココアをマコトに手渡すと、自分の分のカップにそっと口をつけた。
「あちちち…」
「‥ん? なんだ…トウマ。お前…猫舌なの?」
マコトはカップに両手を添えながら尋ねた。
「ああ…あんまり熱いと苦手だ」
それに対し、しかめっ面を浮かべるトウマ。そして、不意にテーブルを挟んで見つめ合った二人。
「…どうした?」
「‥こっち見んな。ココアが不味くなる」
顔を背けるトウマ。気のせいか顔が赤い。
「酷っ!? チアキに続いてお前まで俺を避けるつもりか?」
一方のマコトは動揺のあまりカップを置き、叫ぶ。
「そっ…そういうワケじゃない。ただ…」
少しずつではあるが、トウマのカップが小刻みに震え出す。
「‥ただ?」
「なんか…二人きりだと緊張するからな…」
「ゴホッ!! お、お前…」
むせるマコトと耳まですっかり赤いトウマ。彼女は目を伏せてカップのココアを飲み干した。が、
「‥!? あっちぃ〜〜〜!!!」
部屋に響き渡る悲鳴。そして、口から吹き出る茶色の液体。
「ぐおぁっ!! な、何すんだよ! かかっただろ?」
「わ‥悪い! 今何かふくもの持ってくる!」
ガバッと立ち上がり、足早に部屋から出ていくトウマ。1分もせぬ内にタオルを持って帰ってきた。
「ブレザーが2色になった‥どうすんだよ?」
「うーん‥どうせ今日から冬休みだ。洗ってやるよ」
「…それはそれで悪いだろ?」
そんな会話をしながらも、手にしている白いタオルは茶に染まっていく。
「いや‥俺のミスだ。だいたいふき終わったし、ほら…脱いでくれ」
「あ? ああ…」
おもむろに立ち上がり、汚れた上着を脱ぐマコト。
しかしそんな中、トウマはあることに気がついた。
「…あ、ちょっと待った! マコト‥お前、ズボンにまで付いてるぞ?」
「へ?」
「ふいてやるよ‥じっとしてろよ」
「え? あ‥じ、自分でできるからいいって!」
股間の辺りに手を当て、近づくトウマの手を振り払おうと試みるが、いかんせんマコトはマコト。
「おい‥手をどけろ。ふけないだろ? こら‥じゃまだっての!」
「お‥おい! 止めろって‥ああ…」
抵抗虚しく、股間にタオルが当たる。
「……なんか、変な感じ」
恥ずかしさの余り、いつもは元気いっぱいのマコトの声が僅かにごもる。
「う‥うるさいよ。い、意識しちゃうだろ? ……あれ?」
ぴたりと止まる小さな手。そして再び、今度は恐る恐る、タオルを上下させ始める。
「……………なぁ?」
「………うん?」
トウマが顔を上げると、そこには上気したマコトの顔。
「お前…どうしたんだ? さっきから息があらいぞ?」
「き‥気のせいだよ。うん…気のせい」
そうは言っても、裏返った声では誰も信じない。疑いの眼差しをマコトに向ける。
「ホントに気のせいかぁ〜? 怪しいなぁ〜」
「あ、あやしくなんてないよっ!! 全然まったく潔白だ!」
焦りに焦って、身振り手振りを加えての言い訳をする。
「ふーん…そうか? ……ところで、お‥お前のここ…その…なんだかやけに固いんだけど…」
「!!?? そ‥それはっ…ごご護身用に棒が入ってんだよ!?」
「護身用!? なんだそりゃ? そ‥そりゃあ蹴ったりされたら痛いんだろうけど…どのくらい痛いんだ?」
「痛いとかじゃない! 死んじゃうよ!! まあ…お前には一生その痛みを知らないですむから良いよなぁ〜」
「へぇ〜…お前も色々大変だな…」
マコトの苦し紛れの説明をアッサリ信じるトウマ。
でも、ついてないものの痛みを説明されたら信じるしかない。
「……うーん、なかなか取れないなぁ。マコト、ちょっと強めにこするからな!」
「‥うん。って、ええっ!!」
「我慢しろよ‥このっ! この! 落ちろ! しつこいぞ、汚れめ!」
「あ゛あ゛‥なんか変だ…なんか…」
股間を乱暴に動き回るトウマの手とタオル。マコトの声はさっきよりも悶えたように聞こえる。
体勢は両足を内側に入れ込み、何かを我慢しているような感じ。
「どうした? もうちょっとで終わるからな! それまで待てよ?」
「ま‥まて…あ…っ…くふぅ……っ」
心配の余り手の上下するスピードが増していく。ということは…
「ああ……っ…なんか‥おかしくなるっ!?」
「な、何がおかしくなるってんだよ!?」
マコトの股間に負担が更にかかるわけで…。
マコトの目はトロンとして顔は耳まで真っ赤。息も絶え絶えで、立つのもやっとの様子。
「お、おい! マコト! なんで腰を引くんだよっ! この!」
タオルという魔の手から逃げようと必死で腰を引く。もはやお辞儀レベルの傾きよう。
負けじとトウマも体をねじ込んでマコトを追う。
「えい! やった、捕まえたぞ…って……」
「あっ!? あぁぁぁぁ………」
ガクガクと震えるマコト。固まるトウマ。
そして……床に落ちたタオルと直にマコトの股間を握った手。
「はぁ‥はぁ…なんか、すげぇ気持ち良かったんだけど…」
絶頂を迎え、マコトは軽くげっそり。
「……………おい」
「…ん? どうした?」
ハッとして下を見ると、そこには涙目のトウマが。
「……に…を…ょ」
「…え? 何? 聞こえないよ! トウマ‥お前らしくないぞ?」
「…に…のを……だよ…」
「おいおい‥はっきり行こうぜ。俺‥なんか悪い事した?」
鈍感なマコトを見てため息一つ。そして、
「女になんてものにぎらしてんだよ!!」
と泣きわめきつつ恫喝。
「だからよせって言ったの…ぐはっ!!」
右ストレート炸裂。とてつもない痛みがマコトを襲う。
「許さない! ごめんなさいって言っても許さない!!」
「ああ〜〜〜〜っ!!!」
結局、マコトは怒ったトウマにしつけられましたとのこと。
トウマの女の子らしい一面を垣間見る事ができた…そんな冬の日でした。

おちまい
 

 

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