「それじゃあ、風呂も入ったし、私は寝るぞ」
「そ、そう! おやすみ!」
「…………? なんだ? なんか変だな。まあ、いいや。私は疲れた。今日はホント疲れた。だからもう寝るよ」
カナ……私は知ってるのよ。
今日、帰ってきてビックリした。藤岡君がいて、いつも通りに遊びにきてるだけだと思ってたら……。
『おかえり、ハルカ』
『お邪魔してます、ハルカさん』
『いらっしゃい。今日は、夕飯は食べていくの?』
『あ、いえ! きょ、今日はもう帰ります』
『そ、そうか。ハルカ。私はちょっと下まで送ってくるよ』
『そう? いってらっしゃい』
『(ふふ……あらあら、普段は玄関までなのに、今日は仲がいいのね)』
『(カナったら鈍いから、藤岡君も、もっと積極的になってくれればいいのに)』
『(最近の中学生は進んでるって言うし、キスくらいなら逆にカナのためよね)』
『(……あれ? 変な匂いが……ゴミ箱?)』
『……っ!?』
「ダメじゃないっ!」
「……っ!? は、ハルカ姉さま……? 食器は洗い終わりましたけど……」
「誰がそこまでしていいって言ったの!?」
いくら最近の中学生が進んでるって言ったって……!
「ご、ゴメンなさい……ハルカ姉さまが考え事してたんで、やったほうがいいかと思って……」
高校生の私がまだなのに、そんなことしていいワケがないでしょう!?
「あ、あの……ハルカ姉さま、相談したいことが……」
「いけませんっ!」
「は、はい……では、私も寝ます……。うう……おやすみなさい」
まったくもう! 藤岡君はそういうことしない子だって思ってたのに……!
そりゃ、藤岡君は性格もいいし、今時珍しいくらい真面目な子だけど……。
……でも、男の子だもん、そんなことしないハズはないよね。
そうよ! 大体、カナだってそんな簡単に許して……!
やっぱり、私がちゃんと見ていてあげられなかったのが問題なの!? カナ、ごめんね……。
……でも、カナにもようやく彼氏ができたんだもん、いいことよね。
こんな自問自答を繰り返して、今は23時。もう、カナもチアキも寝てるハズ。
「あ、そういえば、食器を洗わないと……ああっ!? もう洗ってある!? 一体誰が!?」
動揺してるのかな。
とにかく、今日はお風呂に入って寝よう。
ちょっと驚きが大きすぎて、疲れちゃった……。
「ふう……」
サアア……
ふう……シャワーが気持ちいい……。
今日は、クラスで行事についての話し合いがあったから、帰りが遅くなっちゃって……。
その間に二入きりだったのね……もうっ! 私がいないと思って!
サアア……
大体、付き合ってるなら私に一言あってもいいじゃない! カナは私を信頼してないのかな……。
ああ、もう! どうして私がこんなに悩まなくちゃいけないのっ!?
キュッ!
シャワーを止めて、とりあえずシャンプー。
あ、そうだ。藤岡君が近くに来てもいいように、カナのために、もっと匂いが人気あるシャンプーを……。
「って、ダメよっ!」
まったく、ダメよ! ダメったら、ダメのダメよ!
やっぱり、一度カナと話した方がいいかもしれない。
もちろん、私は応援してあげたいけど……で、でも、そういうのはダメだから!
姉として、言うべきところは言ってあげないと……!
でも、もしかして……
『そんなこと言って、ハルカはしたことあるのか!?』
なんて反撃されたらどうしよう……。
た、確かに私が経験無いのも事実だし……でも! だからって!
わ、私だって、全然男の子に縁が無いワケじゃないし……付き合ってって言われたこともあるし。
でも……興味がないのは事実よね。付き合いたいとか思ったことってないワケだし。
ああっ! ダメ! こんなことじゃ、カナに注意なんてできない!
「困ったなあ……」
そういえば、マキも先輩に「好きだ!」って言われてたし……私が遅れてるのかな。
「はあ……」
サアア……
体を洗い流しながら、自分の至らなさについて考える。
カナってどんなことしたのかな……。
サアア……
「んっ……」
いつもより気持ち強めに出していた水圧が、私に変な感覚を与えた。
あ……。
変なこと考えてたら、変な気分になっちゃった……。
サアアア……
「んっ、んっ……」
ん……ここ、に、シャワーがあたると、気持ちいい……。
「あ、あ……んん……っ……ん、ん……」
サワワワ……
気づくと、その場所のちょっと近くに、シャワーのノズルを寄せていた。
「はぁ……」
ぺたん
お風呂場に座り込むと、私はいよいよもって、その行為を続けだした。
そう、さっきの偶然。今やってるのは私の行為。
「あぁ……あ、あぁ……」
ノズルの角度を変えると、気持ちいいところが変化する。
近くに寄せたり、少し離してみたり、一番気持ちいいところを探すのに、私は熱中していた。
「あ……」
気がつくと、私の左手は自分の胸にあたっていた。
「あ、あ……あん……あっ、ん、んん……」
胸の先が固くなってる……。
うう……カナは男の子とキチンとしているのに、私は一人で何やってるの……?
ん……そうだ……これは、カナを注意するために、私も多少知っておかないとってことだから……。
「ああっ、あっあっあ……ああっ! ああぁ……」
サワワワ……
くりっ、くりくりくり……
気持ちいい。
これなら、カナのしてることも仕方ないのかな……。
「あっ! あん、あああ……んっ! んんっ! あ! ぅんっ!」
サワワワ……
あ、もうちょっと水流が強くないと……もうちょっと……!
「ああっ、んっ、あんっ! あ、ああ……! ああ……っ!」
シャワ……!
「ハルカ姉さま?」
あうっ。
「ハルカ姉さま? お風呂に入ってから、だいぶたってますが、何かありましたか?」
「ち、チアキ? な、なんでもないのよ。ちょっと……そう! シャンプーが目に入っただけ!」
「そ、そうですか。それにしては長かったもので……」
「ち、違うの。そう! シャンプーが鼻にも入ったのよ!」
「そ、そうなんですか……それなら仕方ないですね」
「そう! わかったら、シャンプーが耳に入って、もうちょっとかかりそうだから、チアキは部屋に戻って寝てなさい?」
「はい……おやすみなさい」
はあ……危なかった。
チアキったらまだ起きてたのね。チアキに心配かけちゃダメよ。
まったく、カナのせいなんだから! やっぱり、こういうのはダメよ!
私は憤りながら、体を拭いて部屋に戻った。
「もう……やっぱり明日、注意しないと」
ぱたん。
扉を閉めて、ベッドに寝転がる。
ああ、ふとんは気持ちいい……寝転がるのって、本当に幸せ。
「ふう……」
電気を消して、ふとんの中で丸くなりながら考えた。
カナは……もしかして、藤岡君に流されてしちゃったのかも。
だとしたら、注意するのは藤岡君にしてあげないと。
ああ、でも……あんなにいい子が、どんな風にカナを口説いたのかな。
……ムリかも。やっぱり、藤岡君にはムリよ。
「カナ……女の子なのにダメじゃない!」
多分、カナのほうから藤岡君を押し倒したりしたのね!
だけど……カナってそういう恋愛感情とかって見せたことないよね。
……ムリかな。やっぱり、カナにはムリね。
「ああっ! じゃあなんで!?」
とりあえず、思考を落ち着けるために、検証してみることにした。
「多分……藤岡君の手がこんな風に当たって……」
さっき気持ち良かった……胸……に……。
「んっ……」
こ、こんな風……に? カナが声を出しちゃって……。
「んっ、んっ……ぁんっ! あ、ん……んっ! んん……」
あ……これなら仕方ないよ……藤岡君も我慢できなかったんだね。
カナは悪くない……うん、藤岡君も悪くないよ。
「あんっ、あっ、あ……あんっ! ん、んん……あ、き、気持ち……いい……」
でも、カナは私に比べて胸がちょっと小さいから……今度から、朝食には必ず牛乳を出してあげよう。
「ん、んっ、あ、ああ……あんっ……は、んっ……! あ、あん……あ、あんっ! あ、ああ……んっ!」
あ……そうだ、下……下も……。
指を体に沿って下にやると、意外なところが感じたりもした。
「ふあっ……! お、おへそ……くすぐったい……!」
なんだか、だんだん止まらなくなってきちゃった……。
そして、私は自分のそこに指をあてた。
「……はぁ、はぁ……」
なぞるように、なでるように、下着の上から指を這わせる。
「……ぃっ! ……うう……んっ! やん……あっ! いっ! あ……!」
そこは、私が初めて感じる感触を与えて……そして、私をもっと変な気分にさせた。
「あ、や……! ん、あっ……あんっ! くうっ……あ、はぁ、は……っ、はぁぁ……」
「ああ、あんっ! あ、いい……あう、ん、んっ……んんっ! あ、あああぁ……!」
「はっ、はっ、あ! ああっ! っくうっ……あっ! あ! あ……ああ……!」
あんまり声を出して、二人に聞こえたりしないかな……。
それは心配だったけど、声を抑えようとすると、私のそこはもっと気持ちよくなるのを増してしまった。
「う! あ、うう……っ!」
もう……直に、直に触ったほうが、気持ちいいよ……。
そう思って、私の指は下着の中に入り込んだ。
「ああっ! あ、っああっ! は、ああぁ……あ! あんっ! あ、あんっ!」
知らなかった……私のここって、こんな風になってたんだ……。
「うう……あ、あん……あんっ! あ、いっ! う、ああ……!」
こ、ここのふくらみが一番気持ちい……!
「あっ! あんっ! ぅふっ、 あ、ああああっ! あんっ!」
「あ! も、ああ……はぁ、はっ! あんっ! あ! あっ、あーっ!」
「ああああ……あんっ! あ、ああうっ! あんっ! あ! あんっ! あああああんっ!」
はうっ!
は……あ、はぁ……。
そこまでして、私は疲れた。
いっぱいいっぱいになっちゃった。
あ……今日はもう、満足……。
もう、いい……今日は、このまま寝よう……。
私は、部屋の扉から少し漏れる廊下の光を眺めつつ、力尽きて眠りに落ちた。
実は、お尻を出したままのみっともないカッコで寝てたっていうのは、次の日の目覚ましがなった時に、初めて気がついた。
そして、次の日の朝……。
「あう……はっ! いけない! 目覚まし鳴ってるのに、二度寝しちゃった!」
慌てて飛び起きて、朝食の支度をしに、台所へ向かった。
「……あ。ハルカ姉さま。おはようございます」
「あ……チアキ」
いい匂い。チアキが朝食の準備してくれたんだ。
「ゴメンね、チアキ。今日は早いね」
「いえ……昨日は、あんまり寝られなかったんです」
「そういえば、いつもより眠そうだね。ダメだよ、ちゃんと夜更かししないで寝ないと」
「はい……ゴメンなさい」
本当に寝てないのか、チアキは疲れた顔でトーストをかじり始めた。
チアキが夜更かしするなんて珍しいなあ……。
「ふぁーあ。おはよう! 今日もおはよう!」
「あ」
「あ」
あ。カナのことすっかり忘れてた。
「な、なんだ二人して。私がなんか悪いことしたのか?」
「そうだ! 元はと言えばお前が……!」
「まあまあ、チアキ。何を怒ってるのかわからないけど、カナは悪くないよ」
「わ、私か? 原因は私なのか?」
「お前だっ!」
「私は味方だからね」
「ちょ、ちょっと待て! 私のわからないところで、話を進めるな!」
「あ、そうだ……」
とりあえず、私は二人を応援することにした。
その手始めとして……
「はい。カナは今日から、朝晩牛乳2リットルずつ飲みなさい」
「え! なんで私だけそんな目にあうんだ!?」
「いいから。飲みなさい」
「ざまあみろ」
「うあ……」
そう、これが私が藤岡君とカナのためにできること。
「うえ……チアキ、少しでいいから手伝って」
「うう……私にはもう、相談できる相手はいないよ」
今度藤岡君が来たら、夕飯出してあげないと。
精力のつくものをいっぱい作ってあげるから!
よしっ!
 

 

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