何点だろう?
そっと目を開いてみると答案の右上には「72」の数字が。
「なんとかなったー」
最近はいつもの部活動に加えて、チアキちゃんの弟になったっていうトウマの練習もみていたので正直不安だったけれど
赤点どころか割といい点数をとれた。
そうだ、南は何点か聞きにいこう。こういうさりげない会話もきっと大事なんだ。
最近南はよく一年生の男子と話してるけど、あの子にも勝負を挑まれたからにはいつか決着をつけなきゃいけないのかな。
まぁ、今はそんなことより南に点数を聞くことの方が大事だ。
「なぁ南、テストどうだった?」
「おお、番長!前回は負けたけど今回はそうはいかないぞ」
「今回は何点で勝負するんだ?さぁ、言ってみろ!」
また変な勝負になっちゃったなぁ、まぁいいか。
「えっと、72点だけど」
あ、ケイコさんに抱きついた。この二人ってほんとに仲がいい。
それにさっき一瞬見えたけど、南って涙目もかわいい。
「くそぅ、わたしの負けか」
「しょうがないよ、カナったらこないだなんて勉強してたのに急にラムレーズンシューが食べたいって言って帰っちゃったじゃない」
うん、俺はそういうところも南の魅力のひとつだと思うんだ。
「む、アレはその………ソレだ。うん、若いうちは栄養が大切なんだよ」
点数は聞けてないけど、この様子だと俺よりも低いみたいだな。
「まだだぞ藤岡、真の決着は次に返ってくる国語のテストでつけるんだ!」
なんで勝負かはわからないけどそう言われたからにはそうなっちゃうんだろうなぁ。
「いいよ、だけどなんだって勝負なの」
「ん?そうか、ならペナルティとして負け犬には前回と同じく犬のマネをしてもらおう」
なんだかデジャヴ、そんなことを聞いたわけじゃないんだけどな。
「やめなよカナ、そんなこと言ってまた藤岡君蹴っちゃうつもりなの」
ケイコさん、南が負けるの前提なの。それは俺だって負けたくはないけど。
「何を言う、私は勝つん だっ!」
あ、チャイムが鳴った。
「それじゃあ南、またテストが返されたら聞きに来るよ」
「おうっ、いつでもこい」
ふぅ、やっと終わった。
75点、これも結構頑張れたんじゃないかな、俺は。
「おーい、南ー」
「フッフッフ、悪いが今回は私の勝ちだな」
やけににやけてる、こういうところもかわいいなぁ。
「そう、南は何点なの」
「聞いて驚け!74点だ!」
「俺は75点だったよ」
あ、南が倒れた。だけどケイコさんの位置を計算して倒れたから大丈夫だと思う。
「そんな、なんで改竄したのに負けるんだ」
両手を手をくの字に曲げて頭を抑えて嘆いてる。こういうところもかわ(ry
「もう、だからあんなこと言わなきゃよかったのに」
ケイコさんは対照的にプリプリしてる、折角の忠告が無視されたもんね。
「えっと、また俺の勝ちでいいのかな?」
「そうだな、今度はちゃんと負け犬らしくしてやろう。帰りにウチへよっていけ」
南の家に行くのも久しぶりな気がする、行っても最近はトウマやチアキちゃんとばっかり話してたような。
ここで断る理由もないし
「それじゃあ慎んでおじゃまさせてもらうよ」
「よし、じゃあ話はそれで決まりだ」
「おじゃましまーす」
「よく来たな」
よくきたな、ってさっきまで一緒に帰ってたのに。
「遠慮しなくていいぞ、今日はチアキは吉田の誕生日会に行くって言ってたし、ハルカは委員会の日だ」
アレ?それってどういう?
「今日は自由だ!だからどんなことをしてもかまわない」
よくわからないけど、とりあえずここでペナルティ実行なんだろうか?
「じゃあさ、とりあえずお手」
前回と同じことを言ってみる。
すると前回と同じくまた手を蹴られた、凄く痛い。
「バカ!もっとよく考えてものを言いなさいな」
「だからさ、そういう『おかしなこと』をするのはあたしたちには早いでしょう」
「そんなわけで今日はまだおかしなことはなし、いつかちゃんとこのペナルティはうけるから安心なさい」
うーん、よくわからない。そもそも『おかしなこと』ってなんだろう?
「なぁ南、『おかしなこ「あー、もうまどろっこしいよ」
南が俺の疑問をさえぎってそう言うと、俺の口が南の唇で塞がれた。
一瞬の沈黙の後
俺は驚いて一歩さがってしまう。
「ッハァ!な、何するんだ南!」
情けないことに状況が理解できない。
「なんだ、ダメなのか」
南はそういうと凄く悲しそうな顔をしてうつむいてしまった。
もしかして泣いてるのか。声も心なしか震えてる。
「いや、ダメとかそういうんじゃなくてさ」
「だって」
南?
「だってわかんないんだよ!」
怒ってるような、泣いてるような悲しい叫びだ
「あたしだってさ、最初は藤岡を仲間にしようとしたんだよ」
「それはうまくいってたしさ、これで藤岡と敵対することもなくなったと思ったんだ」
敵対って何のことだろう?
そんなことより俺は女の子が、いや南が泣いてるのは見たくないな。
「それなのに藤岡はチアキやトウマとばっかり仲良くしてて、あたしはなんだかわからないけど寂しくなって」
「それで藤岡をどうにかしたくなって」
「南っ!」
今まで女の子を抱きしめたことなんてないから抱き方なんてわからない。
けど、南が泣いてる顔なんて見たくないから。
「ふじ……おか?」
「俺は南のことが好きだ。大好きだ!」
言ってしまった。手紙でも言えなかった自分の気持ちを。
「ふぇ?なんで?藤岡はあたしに果たし状まで送ってきたのに」
「なにを勘違いしてるのかはわかんないけど、俺は南のことが好きなんだ」
この気持ちに偽りはない。
「藤岡、本当なのか?」
ああ、本当だ。
さっきのお返しと言わんばかりに南の唇を奪う。
唇と唇と重ねるだけの子供のキスだけど、これでいい。
「俺の気持ち、伝わった?」
「………うん」
南は赤い顔で少しボーッとしている、多分俺の顔も凄く赤いんだと思う。
「あのさ、藤岡」
「何?」
「気持ちはわかったんだけど、その………少し苦しい」
思えば力いっぱい抱きしめていたようだ。
「ご、ごめん。今はなすから」
「いや、離さなくていいぞ。」
え?
「このままでいてよ、どーせまだ誰も帰ってこないし」
「そうかー、藤岡はあたしのことが好きなのか。ふふふ」
なんだか笑ってる。
どんな南もかわいいけど、やっぱり笑ってる南が一番かわいいな。
「じゃあさ、藤岡」
「うん」
「これからもたくさん一緒に遊んで、たくさん楽しいこと見つけよう」
「そんでわたしと藤岡が一緒にわらうんだ」
「うん、凄くいいと思うな、そういうの」
これからどうなるかはわからないけど、俺と南が一緒に笑うっていうのは楽しそう。
「それじゃあ、これからはそういう方向性でいきましょう。あ、だけど『おかしなこと』はまだ無しだからね」
あんまりかわってないような気もするし、『おかしなこと』がなんなのかわからないけど。
今日は少し南に近づけた気もする。だからこの場もいつもどうり微笑んだ。
そうしたら南がいつもみたいに笑いながら言ったんだ。
「そうそう、一応言っておくが私は今日のことがファーストキスじゃないからな」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

 

 

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